パブロ・アマリンゴが語るアヤワスカとシャーマンの世界

以下は「オルタード・ディメンション」9号の記事を一部抜粋しています。全文をお読みになりたい方、アヤワスカとそのシャーマンの世界についてもう少し詳しくお知りになりたい方は「オルタード・ディメンション」9号をお読みください。

南米北西部(コロンビア、エクアドル、ペルー、ボリビア、ブラジル、ベネズエラ)の、主としてアマゾン川流域に自生するバニステリオプシス・カーピ(Banisiteriopsis caapi) という学名をもつ巨大な蛇を思わせるつる植物のことをアヤワスカと呼ぶ。アヤワスカには、ケチュア語で魂のつる(vine of soul)、精霊のつる(vine of sprits)といった意味がある。

一方、バニステリオプシス・カーピを煎じて作ったサイケデリック飲料も、同様にアヤワスカという。現代のブラジルの宗教的なグループの間でも使われており、ダイミ(サントダイミ)、オアスカ(ウニオン・ド・ヴェジタル)などと呼ばれている。

アヤワスカ飲料は通常、他の植物(時には何種類も)をミックスして煎じ薬のように作れる。混ぜられる植物で代表的なものとして、「オルタード・ディメンション」9号の特集記事に登場するチャクルーナ(Psychotria viridis ) やチャクロパンガ(Diplopterys cabrerana)がある。

ヴィジョンを見たり意識の変容に大きな役割を果たすDMTは単独で経口摂取しても、胃中の酵素で代謝されてしまい効果はない。しかし、その代謝を妨げるハルマラ・アルカロイドを含むアヤワスカとミックスすると、DMTが有効に効果を発揮するようになる。

アマゾンのシャーマンはこうしたアヤワスカを飲むことにより異なった次元の世界へとおもむく。そこで知恵を授かり、呪術や医療をおこなう。

今号の特集アヤワスカの最初に登場するのは、元シャーマンで、かつてアヤワスカによって見たヴィジョンを描きつづけている画家パブロ・アマリンゴ氏である。1994年にNHKテレビ「脳と心」で紹介され話題になったことをご記憶の方もあるかもしれない。講演会での通訳を務めた永武ひかるさんとの共著『アマゾンの呪術師』、画集"AYAHUASCA VISION (未邦訳・共著)" がある。

<以下、パブロ・アマリンゴ談>

シャーマンになる

私はこどものころにはシャーマンなどというものを信じていませんでした。シャーマンと呼ばれる人たちはお喋りで、どちらかといえば戯言を言っているのではないかと思っていたからです。

若いころ、村の役場で働いていましたが、心臓を5年ほど患い、なかなか治りませんでした。そこで、地元のアヤワスカを使うシャーマンの治療を受け、アヤワスカの作用のなかで、どのように直すかを学びました。

アヤワスカを飲んでから、体験で教えられた決まりに従って、8日間食事制限などをしたところ、病気が治り、今にいたっています。そういった経験があったにもかかわらず、まだシャーマンの世界を信じることができずにいました。

後に妹が肝炎を患って、死にそうになりました。そのときアヤワスカを使う女性のシャーマンがわずか3時間ほどで妹の病気を治してしまいました。

この治療を実際に見て、改めてアヤワスカの世界を知り、受け入れるようになったのです。

それから1年ぐらいの間、食事制限をするなどシャーマンの掟にあるような修行の後、さまざまな患者を治しました。

そうした経験を通じて、私たち人間の目には見えませんが、精霊、霊的な存在がいて、そういった存在と常につながっていることを知ったのです。

アマゾンのシャーマンの世界はアヤワスカだけでなく、シャーマンを導くいろいろな植物があり、ひとつの科学といえましょう。よい方向に導かれることがありますが、悪い方向に転がってしまうこともあります。

アヤワスカの作用と世界

アヤワスカにはいろいろな作用があります。病気を治すこともありますし、薬物依存やアルコール依存に効くことがあります。というのはアヤワスカが治すのは身体的なものだけでなく、スピリチュアルな作用があるからです。

アヤワスカの世界は聖なるもので、科学でもあります。私たちは秘められた科学を尊重しなくてはなりません。だからといって、魔術的な科学といった意味ではありません。あくまでも植物独自の世界があり、その教えがあるということです。

植物には精霊がいて、慈しみをもって教えをもたらしてくれる、だから尊重しなければならないという意味です。そのため、この植物は「マエストロ(師)の植物」、「世界の目」と呼ばれています。

アヤワスカの作用が非常に強いときがあります。身体感覚がなくなり、全く違う世界にいってしまって、そこから戻れなくなってしまうのではないか──身体感覚はなく、天もなく、地もなく……そういうなかに入り込んでしまったとき、恐怖感がわきでて、叫んだり、気が違ったようになってしまうこともあります。そうしたとき、強い作用はまるで音波のように次から次へとやってきます。シャーマンは強い作用をコントロールし、ある意味で耐え得るようにします。

ですから、マエストロ(師)なしに飲むと、危険が伴うこともあります。

絵を描きはじめる

シャーマンを辞めて10年後にシャーマン時代のヴィジョンを描きはじめました。

そのころ、化学者、文化人類学者、生化学者などさまざまな人たちに会いました。そうした人々のなかに、アマゾンの魔術的な植物を探して調査や研究していたデニス・マッケナ(植物化学・薬理学者。兄テレンス・マッケナとの共著『見えない風景』<未邦訳>がある)、ルイス・エドワルド・ルナ(アヤワスカの研究として知られる文化人類学者。コロンビアのアマゾンで地帯で生まれ育った。画集"AYAHUASCA VISIONS" の共著者)がいました。

最初に2枚の絵を描きました。彼とデニス・マッケナはその絵を見て非常に驚き、喜んでくれたので、2人にプレゼントしました。この2枚の絵はひとつはワシントン、ひとつはストックホルムの科学者たちの会議で披露され、占星術、心理学、生化学など分野から見て意味があるということで反響を呼びました。これらの絵はすべて私が経験したことや精霊たちから受けた教えを描いています。

こうした精霊の教えやメッセージを伝えるために今もシャーマンの時代のヴィジョンを絵に描いてるわけです。さらにそのメッセージを言葉でも伝えるためにさまざまな国でお話をしてきました。ストックホルムではかつて1200人の聴衆を前に、アマゾンの環境問題について話をしたことが 。ありました。そのような活動が認められ、1992年のブラジルで行われた地球サミットでは「グローバル500」賞をいただきました。

(1999年11月26日に行ったオルタード・ディメンション研究会主催の講演記録より)